熱力学的温度

その基準の間の温度をどうとるかを決めているのが、2.3.5 $^{\text{p.\pageref{sec-AbsoluteTemperature}}}$で示した熱力学的温度(絶対温度)$\varTheta$[K]の定義である可逆サイクル(カルノーサイクル)でのそれぞれの熱源とやりとりする熱量の比を示した次式(2.12) $^{\text{p.\pageref{eq-AbsoluteTemperature}}}$である。

$\displaystyle \frac{ \vert Q_\mathrm{2 可} \vert }{ \vert Q_\mathrm{1 可} \vert } = \frac{\varTheta_{2}}{\varTheta_{1}}$ (2.12)

2019年に発効した国際単位系(SI)第9版から温度の基準は特定の物質の三重点の温度ではなく、ボルツマン定数により定義されるようになった[]。 ボルツマン定数と温度の関係として、ボルツマン定数 $k_\mathrm{B}$とアボガドロ数 $N_\mathrm{A}$の積は気体定数となる。アボガドロ数もボルツマン定数と同様に国際単位系(SI)第9版において定義とされている定数で、それぞれ $N_\mathrm{A}=6.022 \; 140 \; 76 \times 10^{23} \; \mathrm{mol}^{-1}$ $k_\mathrm{B}=1.380 \; 649 \times 10^{-23} \; \mathrm{J/K}$ このことから理想気体の状態方程式が次のように表される。

$\displaystyle PV = n k_\mathrm{B} N_\mathrm{A} \varTheta$ (3.1)

理想気体の状態方程式での理想気体温度と熱力学的温度は同じ値を示す付録C.1 $^{\text{p.\pageref{sec-IdealGasTemperature}}}$

しかし、実在しない可逆サイクルや理想気体では温度計を作るさいに使えない。そこで、温度計を作る際に比較対象となる基準を温度域ごとに実際に手に入る計測機器で定めた1990年国際温度目盛(ITS-90)[]が今でも温度計の校正に使われている。 例えば水素の三重点13.8033 Kから銀の融点1234.93 Kの間は基準点で校正された白金測温抵抗体の値で定義される。間の基準点にはネオンの三重点24.5561 K、水銀の三重点234.3156 K、水の三重点273.16 K、アルミの融点933.473 Kなどがある[]。 より詳しい内容に興味があれば、1990年国際温度目盛(ITS-90)の日本語訳の文献[]が無料で公開されているので参照すると良い。 また、日常使われる摂氏温度$\theta$[℃]は2.3.5 $^{\text{p.\pageref{sec-AbsoluteTemperature}}}$に示したように次式で国際的にSI単位系において組立単位として定義されている[]。

$\displaystyle \varTheta = \theta + 273.15
$

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