局所熱力学的平衡

温度を扱うためには熱平衡でなくてはならないが、熱平衡は断熱され十分に時間が経過した後の温度が一定の状態であり、現実には周囲の状況は刻々と変わりその影響を受けるため温度が一定となることはありえない。ほぼ全ての系が非平衡であり、熱のやりとりがある熱機関やヒートポンプも非平衡状態である。そのため、熱平衡ではないほとんどの場合で温度を扱うことができないこととなってしまう。しかし、温度を扱えないと困るため、局所的に熱平衡である、と考える。 実際に私たちが温度を日常的に使い測定している場合には局所的に熱平衡であるとして測定をしている。

局所熱力学的平衡では系を非常に小さくとり局所的には温度や圧力の分布が一様で熱力学的平衡が成り立っていると考える 3.1。 例えば、1 cm$^3$の容器内での1 msの時間で起こる状態変化は十分に局所熱力学的平衡を満足している[]。このことから、局所熱力学的平衡が成り立つ系であれば、全体として熱力学的平衡が成り立っていない系であってもこれまでの熱力学の結果を適用できる(温度などを使える)。 より詳しい内容について興味があれば文献[][]や、ボルツマン分布については統計熱力学の参考書を参照するとよい。温度とボルツマン分布についてはAtkinsの本[]もわかりやすい。



脚注

...局所熱力学的平衡では系を非常に小さくとり局所的には温度や圧力の分布が一様で熱力学的平衡が成り立っていると考える 3.1
この局所熱力学的平衡はほとんどの現実的な状況において成り立つと考えられ、統計熱力学的には分子数とエネルギーの関係がボルツマン分布となる。連続体として扱えないような分子数が少ない場合や変化の時間が短い場合は局所熱力学的平衡が成り立たないこともある。
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