はじめに

熱力学は、熱から仕事を取り出す機械である熱機関の効率を良くするために十八世紀頃から発展してきた学問である。熱“力学”という名前から“力学”についての学問と連想されるが、力について熱力学で扱われることはほとんどない。 では何について学ぶのか。熱力学ではエネルギーについて深く学ぶことができる。省エネルギーなどエネルギーの消費を抑えるというのは何を意味するのだろうか。エネルギーが消えるような表現がされるが、科学の基本的な法則であるエネルギーの保存則として知られているように、エネルギーが消えることはない。通常、エネルギー消費と言われる場合には、電気エネルギーや化学エネルギーなどから熱への変換を意味している。何故、熱への変換を消費と表すのだろうか。現在使われているエネルギーの多くが、太陽から地球へ伝わる熱から仕事を取り出し、その仕事を変換することで得られている。熱力学では、熱から仕事を取り出す熱機関について変換の効率の限界があり、その限界をこえることができないことを知ることができる。現在の社会問題にも大きくかかわるエネルギーや熱の基礎的な考え方を熱力学を通して学んでもらいたい。

熱力学は基本的な法則から理論的に組み立てていく公理的な学問である。 この熱力学において、どのような仮定が置かれていて、仮定から出てきた結果が実際にどのように使えるか、なるべくわかりやすいようにまとめた。特に、理想気体がなくても熱力学は成り立つこと、またどんな仮定が何に対して使われているか混乱しないように進めた。まだ作成途中であるため、詳細を知りたい場合は末尾の参考文献を参考にしてほしい。

学生にとってなるべく分かりやすい内容となるように、学生との熱力学の勉強会での内容を参考に作成している。勉強会の参加者の学生の諸君と、内容について助言を下さった皆様に感謝します。このテキストを使った熱力学勉強会の参加者; 2021年度 稲富啓紘さん、植田光さん、野見山有希乃さん; 2019年度 有友拓海さん、三宅智哉さん、森叶葉さん、渡辺貴裕さん; 2017年度 嘉村和樹さん、木村友士さん、久保田鷹也さん、松尾聖之さん; 2016年度 織田旺伸さん、高山卓也さん、後藤剛志さん、塩谷光基さん、樋口裕樹さん、宮田晃志さん、吉島正朗さん; 2015年度 田中文弥さん、豊田裕樹さん、中井浩さん、中村健太さん、福田章人さん、本田悠さん、村松純希さん、吉田一喜さん; 2014年度 塩谷光基さん; 2013年度 井上貴司さん、江島大和さん、河添章寿さん、中磯亨介さん、福田耕太郎さん、森聡一朗さん、山野快さん; 2012年度 中島彩子さん、松本健介さん; 2011年度 江島大和さん、行徳俊希さん、栗山卓也さん; 助言を頂いた方:松原晋介さん、松尾叔美さん、太田有紀さん。また、確認が取れなかったため名前を挙げないがこのテキストを使う2011年度以前に参加してくれた学生諸君との勉強会もこのテキストを作る助けになりました。

この図を含む文章の著作権は椿耕太郎にあり、クリエイティブ・コモンズ 表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際 ライセンスの下に公開する。最新版はhttp://camelllia.netで公開している。

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